土葬された競走馬のなかでも、ほかの4頭とはちょっと違うのがパシフイカスである。
ほかは紛れもなきスーパーホースたち。現役時代に多くのファンを虜にした
人気馬の中の人気馬たちだが、パシフィカスはどちらかというと繁殖牝馬とし
て名声を博した馬。現役時代日本のレースにもまったくでていない馬なのだ。
いわば、ビワハヤヒデ、ナリタブライアン、ビワタケヒデを輩出した名繁殖
馬として殿堂入り(?)したようなもの。ファンが多いかといったらそうでも
ない微妙な立場。パシフィカスはどちらかといえば、オーナiサイドの鶴い心情から土葬に葱った濡有葱例だということができるのだ。
彼女は、H牧場の敷地内に埋葬された。
「これほどの繁殖馬はそうそうはでない。なんとしても土葬に
してあげたい」
オーナーの強い意向があったそうだ。
だがその後、H牧場は資金繰りが悪化。パシフィヵスの死後
わずか3年後の2002年に砿産宣告を受けてしまうのだ。牧
場は抵当に取られ、売却処分の対象になる。2002年といえ
ば日本経済も底にあった頃・…:。H牧場はかなり安い値段で売却された。そして現在は『Dステープル』という名称になっている。
いまから話す競馬情報内容は『Dステーブとで働いていた元騎手のK君から聞いた話である。
敷地内のなかのちょっとした小高い場所にパシフィカスの墓はある。
何頭かの馬のお墓が並び、馬頭観音の隣りにある平らな墓石に「偉大なる母
パシフィカスここに眠る」と書いてある。たまにお墓参りに来る人もいる。し
かし彼らにしても、ナリタブライアンやほかの名馬のお墓参りついでに寄って
いる人がほとんどだ。墓所のある場所は、昼間はいいが夜はちょっと寂しい感じが漂っている。
ある夜、K君は暗くなってから墓所のある方角から馬の蹄の音を聞く。
最初は気にしなかった。が、この時間に放牧している馬などいるわけない。
「よその馬かな?」。何かの間違いで馬が放たれている可能性もあるといけない
と思って、音の聞こえるほうへ確かめに行ってみた。
するとK君はそこで不思議な炎を見てしまう。
パシフイカスの墓所の上に、ボーッと青い炎が浮かんでいるのだ。
「な、なんだあれは?」
遠くから光が照らされ墓石に反射しているのか、と思った。だが現場はほか
から強い光が入ってくる場所でもない。よく見ると、まるで画家シャガールの
窟く「青公馬一のような炎が漂っている。それが馬の幽霊だとK君は直感する。
とたんに緊張が襲ってきた。さっきの蹄の音がまた聞こえてきた。
なぜか足が動かない。ここから逃げなくては:…・という強い気持
ちでようやく体を反転させてその場から逃げ帰った。
K君はそのことを同僚に話すが、意外なことにほかのスタッフ
たちも似たような経験をしていたのだそうだ。
「実は僕だけじゃなくて、そこで働いている人はほとんど知って
いました。研修にきていたフィリピンの人たちも経験していまし
たね。僕らの間では、やはりあそこで土葬にされているパシフィカスの霊じゃ葱いがってことになってますよ」
確かにそこの墓の並びで土葬されているのはパシフィカスのみ。
動物がそのまま土葬にされると、体内にあるリン成分が気化して空気中に青
白い炎が漂うことがあるそうだ。それが昔からいわれる人魂の正体とか……。
K君が見たのはまさにそれだったのか?しかしパシフィカスが土葬されてか
らすでに4年以上の歳月がたっていたことを考えると、青白い炎がなんだった
のか説明がつかなくなる。
ところが、北海道の馬産事情に詳しい人によると「あれは無憲のパシフイカ
スの卿鴛一麺だよ」と断言する人もいる。
「元々あそこにあったH牧場は、ずっと資金繰りが大変だったんだよ。一部
のウワサでは、馬に多額の保険金をかけていたなんていう話もある。保険をか
けた馬が次々と死んでいったのは事実だからね。産駒がいいのを出したパシフ
ィカスにも保険がかかっていたし。土葬にはされたけど、ある意味無念だったんだろうよ……」
なんとも含みのある発言である。
北海道に行った際は、是非パシフィカスのお墓の前で手を合わせてきていた
だきたい。